09.
福島 
Fukushima



「車で走っていると、突然 壁に出くわした。
街のなかで、急に。はじめて見たとき、本当に怖かったんだ。」

ボストンから来た髭の友人は、そびえ立つやまを指差し、笑いながらそう言った。

わたしが暮らすやま。
標高275メートル、福島市のちょうど真ん中にぽっかり浮かぶ信夫山(しのぶやま)。
そう、kvinaの皆が町を一望し、珈琲を飲んだっていう、あのやま。

雪道は滑って駆けおりるし、やまから吹く夏の風は、ひやっとして心地よい。
おっと春の桜だって、それは見事だよ。

やま暮らしはなかなか快適だけれど、活気ある街中はまた格別だね。

街のあちこちにある個人商店。

メガネ屋花屋雑貨店建築家だって珈琲店だってイタリア料理人だって、みんな仲間。
そうそう、音楽はもちろん欠かせない。誇るべき街のレコード屋も、皆のお祭りFOR座RESTだって、みんなこの街にあるんだ。

店主それぞれが街のコンシェルジュっていうものだから、行くところには困らないよ。
それぞれのトッテオキを聞いてみて。みんな「ここは!あそこは!」としたり顔。

それじゃ、わたしはとびきりの中国料理店をご紹介しようか。
中国料理といっても、そこは北京流 創業40余年の店だ。
夫婦ふたりで営むこの店は、常連客でひっきりなし。

どこに座る?
空いているなら、ぜひカウンターへ。
オーダーする。料理が運ばれる。そのすべてを堪能できるお店だよ。

よく手入れされたピッカピカの調理台が見えたら、ますます期待が膨らむね。
何を食べるかは、心配いらない。そのときの腹具合と相談して、オーダーしようじゃないか。どれも自慢の一品さぁ。

でもね、迷う気持ちはよくわかる。

わたしはいつも、4種類の「ギョウズ(餃子)」から選んでる。
焼き、水、揚げ、蒸しの4種類。どれも皮の厚みや包み方、調理法だって違うんだもの!
餡(あん)の味付けは一緒、だのにその味わいは千差万別。調理法でこんなにも、変わるだなんて。試してみる価値大ありさぁ。

おっ!厨房をみてごらんよ。
まな板が、包丁が、リズミカルに小気味よい音を奏でる。
中華鍋が宙を舞う。油がはじけて、その香ばしいかおりが鼻先に届いたら、
準備はいいかい?

今度はこちらの出番ってわけ。

熱いものは、熱いうちに。冷たいものは、とびきり冷たいそのままを。
料理がいちばん美味しく提供される、その瞬間。
それをめがけて、ビシッと女将さんがサーブしてくれる。

そうっ!
たべるときの、お勧めがあるんだ。

ギョウズをまず一口、何もつけずにそのまま味わってみて。
ギョウズは、皮が命。注文を受けてはじめて包むギョウズの餡には、しっかりと味が付いている。
だから、何も付けずにそのままを。
ちょっと味が足りないと思うのなら、カラシにお酢を用意してもらって。
お酢で溶いたカラシが、小麦粉の甘さを引き立ててくれる。
これが、病みつきになること、うけ合いさぁ。
もちろん、あとは好みで召し上がれ。

自分の感覚を信じて、料理人との真剣勝負。
ハフハフ、ホッホ、出来がけを頬張って。
それが、「あたらしく足踏み入れる町」の愉しみかたでしょう?

そこにこそ、出逢いがあるから。

あの地震で、東北の皆は暮らす町のありがたさを、身をもって感じた。
そして、暮らす町はそこに住んでいる人が創るものだと、確信した。
大型チェーンも、個人商店もみな一緒に暮してるんだ、共存しているんだ。

足をのばしてくれて、ありがとう。

ようこそ、東北。
いらっしゃい、わたしたちの暮らす街 福島へ。
「中国料理 王芳」絶品だよ。
口にあうと嬉しいな。





LIFEKU 田中 栄 (PICK-UP)



中国料理 王芳(ちゅうごくりょうり おうほう)
餃子をはじめ、チャーハンも最高に美味しい中華料理店。福島に行ったらぜひとも!

〒960-8036 福島県福島市新町7-12
TEL:024-536-8283
定休日:火曜 
OPEN:平日 11:30~14:30・17:00~20:00(日曜・祝日17:00~19:30)

LIFEKU(ライフク)
“福島に来る、福が来る、福島に暮らす”の意味。“協力・共存して、 商業振興・社会貢献をし、福島のセンスとスタイルを伝える”をテーマに、福島県内の商人有志が集まって発足。F-pinsの制作・販売やイベントなど幅広い活動を行っています。

PICK-UP(ピックアップ)
フランスのボーダーニットやアメリカのボタンダウンのシャツなど、定番をさらりと着こなす福島男子のスタイルを築いてきた伝説的なショップ。アメリカントラッドを伝え続けて32年。服好きには、ぜひとも袖を通し、足を運んでもらいたいお店。


︎10. 福島  飯坂温泉  Fukushima Iizaka